相撲編【相撲 大相撲力士の健康管理に関する取り組み調査】
力士の食生活ー調査の様子「相撲/時津風部屋 第3回 2005/11/1up」ー
日本人の食生活は今大きく変化しています。エネルギー摂取量は昭和50年をピークに減少し、平均でみるとほぼ適正量となっています。しかし、エネルギーに占める脂質の割合は、昭和63年に適正比率の上限とされる25%を越えて以来、毎年上限値をオーバーしています。これは、米類からの摂取量が減り、動物性食品や加工食品、調理済み食品などを利用する機会が増えているためです。
また、共働きの家庭の増加に伴い、家族揃って食卓を囲むことが少なくなり、1人ひとりが別々の時間に、異なった食事をしていることも珍しくありません。
若い力士たちもまた、幼いころからこのような環境のなかで育っています。そのため、入門してからも、主食の米はあまり食べず、自分の好きなおかずばかりを選んで、苦手な野菜には箸をつけません。そして、お腹が空けば、また外で好きなものを買って食べるのです。
スポーツ選手の健康管理
スポーツをする人の中には、肉などの蛋白質を多量に摂ることが筋肉増強につながると信じている人が多いです。しかし、蛋白質の多い食品は、同時に脂肪の摂取量を増加させてしまいます。摂り過ぎは「体づくり」にかえって逆効果になることを覚えておく必要があります。
このようなライフスタイルの変化は、以前にも増して力士たちの体脂肪を増加させ、肥満や糖尿病、高脂血症、高血圧、高尿酸血症など、さまざまな疾病を招く原因となります。
相撲に限らず、スポーツ選手が少しでも長く現役で活躍するためには、まずは心身ともに健康でなければなりません。
長い一生の中、力士としての現役の期間はごくわずかです。その期間に、力士としての体をつくることはもちろん、先代の時津風部屋のように、中高年になっても生活習慣病を寄せ付けない体を作るという意識改革を、相撲界全体ですすめていかなければならない時期に来ているのだとおもいます。
今後の課題
スポーツをする人であれば、競技力の向上はもちろんのこと、けがを予防し、常にトレーニングや競技に参加できる状況でありたい、とだれもが願うはずです。力士も例外ではなく、強くなるために体を大きくし、日々厳しい稽古に励んでいます。
運動と食事、栄養との関係が明らかになるにつれ、科学的な考え方を取り入れながら、そのスポーツ種目に適した食事をする競技団体が増えています。マラソンのカーボローディングや、サッカーの試合前の軽食などは、その代表的な例です。
このような科学的な考え方は、競技力の向上につながるだけでなく、何よりも、スポーツ選手の食事に対する意識を高めるきっかけになります。どんなに稽古をしても、どんなにバランスのとれた食事を用意しても、力士自身が食事の重要性を理解し、実践に移す能力を身につけなければ、相撲に適した「体づくり」はできません。
そのためには、若いうちから稽古の一環として、運動と食事についての知識に触れる機会を増やし、自分自身で正しい食品の選択ができるよう、継続的に教育を行なっていく必要があるのではないかと思います。
このような日常的なことを繰り返すことが、結果的には生涯にわたり力士の健康を維持することにつながるのです。

臨床スポーツ医学 第20巻 第11号 別刷
大相撲力士の食習慣と今後の課題

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